添加剤解説:ZnDTP(ZDDP)-ジアルキルジチオりん酸亜鉛-
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更新日:5 時間前
エンジンオイル(の添加材)には、大なり小なりZnDTPが含まれています。
これは亜鉛とりんと硫黄の複合化合物で、下記のような幅広い効能が得られる万能添加剤です。
AW(Anti-Wear):抗摩耗性
AO(Anti-Oxidant):抗酸化性
EP(Extra-Pressure):極圧性
このオールマイティな性格のため、昔から多用されてきた代表的な添加剤の一つです。(旧車やオートバイには今でも重宝されています。)
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┃ ZnDTPのデメリット1:ガソリン車の触媒を傷める
近年はオイルの規格でSAPSの規制が厳しくなっているため、"りん"においても触媒への被毒性が強いことから厳しい数値(0.08%以下)で定められています。
参考:
なぜならリンによって酸化触媒であるパラジウム等の貴金属が冒されると、その後は排ガス浄化性能が永久的に低下してしまうからです。
!重要! 『ガソリン車の三元触媒にとって"りん"は大敵である』
…さて、アメリカ製のエンジンオイルの一部では『Hi-Zinc(高亜鉛)オイル』という名目で売られている商品がありますが、これには上記の理由により注意が必要です。
概ねこのようなオイルに多添加されているのは亜鉛単体ではなく「ZnDTP(ZDDP)」なので、結果的にリンも多く含まれることになります。
::参考::
ケンドール Kendall GT-1 オイル成分分析結果

なので、『高耐久!』とかの売り文句ばかりに気を取られてしまうと、その隠されたデメリットに気付かず車を傷めてしまうことになります。
このようなHi-Zincオイルが使えるのは触媒のなかった(または規制の緩かった)時代の旧い車,オートバイに限ります。
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┃ ZnDTPのデメリット2:潤滑性が落ちる
これはZnDTPのメリットの副作用でもありますが、ZnDTPの抗摩耗性は亜鉛とリンの複合反応によるガラス状の被膜による効果です。
このガラス被膜がエンジンの金属表面を守ってくれるのですが、一方で摩擦係数が高くてざらざらした性質があります。
「摩耗は防ぐが摩擦は大きい」
という特殊な性質を持った被膜を作るのは、他にはないZnDTP特有のものです。
このため、エンジン回転の滑らかさという点では低下させる方向に働くため、低馬力・低トルクなエンジンにとっては特に不向きと言えます。
一方で、この特性は湿式クラッチを持つオートバイにとっては逆に完璧にマッチします。
(クラッチが擦れて温度が上がる&圧力が加わると、摩擦係数の高いガラス被膜が形成される)
この他に代えの利かない特性は唯一無二の存在としてオートバイに求められるオイル性能を根底から支えており、特にハイパワー車の純正規格に見るJASO MA2は1%超で高配合される傾向にあります。
※なおオートバイの中でもスクーターやハーレー等の乾式クラッチ車には無関係な話です。
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┃ ZnDTPのデメリット3:スラッジ化
ZnDTPは特段耐熱性の高い添加剤ではなく、比較的早い段階の中温域から酸化・分解が始まります。
また性質上、自身が身代わりとなって酸化物質を分解するため、働き終えるとその後はスラッジと化します。
スラッジが発生するということはそれを分解するために清浄分散剤が消耗することになります。
清浄分散剤の消耗はイコール塩基価の低下を意味し、塩基価の低下はオイルの酸化を食い止められないことを意味します。
オイルの耐久性を考えた場合、スラッジの発生要因は少ないに越したことはありません。
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┃ ZnDTPに頼らないオイル設計
以上のように、かつては万能添加剤として重宝されたZnDTPも、現代のオイル要件においてはあまり好ましくない存在として添加率がシビアに調整されています。
代わりにZnDTPの持つ多様な性能は、それぞれ以下のような添加剤に置き換えられています。
・AW(Anti-Wear):抗摩耗性
→有機モリブデン(MoDTC)
→リン酸エステル
・AO(Anti-Oxidant):抗酸化性
→ジフェニルアミン
→ヒンダードフェノール
・EP(Extra-Pressure):極圧性
→ZnDTP(継続)
ただ、添加剤の種類が増えるということはコストが増えることにつながります。
とは言え、時代に合わせてアップデートできていない……未だにZnDTPに依存したオイル設計では思想が古いと言えるでしょうね。
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ここまでが、いま私が持ってる知識で書ける精一杯です。
ご参考まで。
いつも勉強させて頂いています。
…バイクには触媒が無いという話ですが、ここ最近(主に2000年前後から以降)のものには触媒をサイレンサー前に挟み込んで装着されております〜。もちろんご存知だとは思いますが…。