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ディーゼル車のDPF詰まりとエンジンオイルの関係

  • 執筆者の写真: Verior
    Verior
  • 3月15日
  • 読了時間: 6分

更新日:9月22日

DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)
DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)

昨今のDPFを搭載したディーゼルエンジン車とは切っても切れない関係にあるのがエンジンオイル。


ところで、、、


「DPFって不完全燃焼した煤を集塵する部分じゃないの? 」

「なんでエンジンオイルに指定があるの?」


って思ったことはありますか?


エンジンオイルがどこから排気管へと紛れ込んでいるのか。

もしかして燃焼室で一緒に燃えてる?

かと言ってエンジンオイルが目に見えて減ってるわけでもないような。。。


みたいな疑問を説明してみようと思います。


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【DPFの役割】


ディーゼル車に乗っている方ならご存知だと思いますが、昔と違って今のディーゼルエンジンには排ガス対策としてDPFと呼ばれる集塵装置が排気管の途中に取り付けられています。


ここで煤を集塵するのですが、ある程度煤が溜まってくると『再生』と称する燃焼によって、煤の焼き切りを行います。


これを繰り返すことで排ガスを継続的にクリーンにするという仕組みです。


画像引用:シェルルブリカンツジャパン

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【うざい再生燃焼】


ところで、この再生燃焼という作業がまぁまぁ結構な頻度で起こる。


もちろん乗り方によっても大きく左右しますが、数百キロごとには発生するイベントで、走行中に勝手にやってくれる自動再生であれば気にしなくてもいいですが、手動再生の場合だと停車中に行わなければなりませんし、無視する訳にもいきませんから結構なストレスです。


大型トラックなんかは一度に走る距離も結構あるので、DPFのサイズが大きいとは言っても毎度の事なのではないでしょうか。



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【エンジンオイルが指定されている訳】


冒頭に書いたように、DPFにはエンジンオイルが影響しているからこそディーゼル指定のエンジンオイルが存在しているわけですが、その指定オイルが定めている基準で重要視しているのが「硫酸灰」の量です。


JASO DL-1であれば0.6%以下

JASO DH-2であれば1.0%以下

ACEA C3やC5であれば0.8%以下


と、小数点以下の世界でやたら細かく指定されています。


DPFの再生燃焼によって煤は焼ききれても、オイル内に含まれる金属成分は焼ききれずに残ります。

その金属成分の燃え残りが『灰』なわけで、DPFを最終的に詰まらせる物質になります。


画像引用:DPFドットコム

DPFに残った灰
DPFに残った灰

なので、DPFの寿命を伸ばすという意味でオイル内の灰分を規定しているのです。



余談:

ちなみにJASO規格では灰分に関しては厳しいけど、エンジンの保護については二の次になっているようなレベルの規格です。

規格適合していても良いオイルとしょぼいオイルの落差がひどいですので、良いオイルを選ぶのはかなり上級者向けです。


まぁしょぼくてももちろん壊れはしないでしょうけど、かと言ってDPFの再生が長いかというと別にそんなこともない。なんだかそんなレベルの規格です。


大事なのは規格じゃないんだなぁ。…あ、ACEAは信用していいですよ。



なお、JASOのディーゼルエンジン規格がこれ。

(画像をクリックして拡大)

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後半の大半はシール・ゴム適性試験だけ。

オイルの性能に関する基準は粗くて緩い。灰分以外は規制する気ないでしょ。



一方、ACEAディーゼル規格(乗用車)の評価項目はこんなに細かい。

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なのでACEA規格はそれなりに信用できるのです。



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【なぜエンジンオイルがDPFに影響するのか】


さてそろそろ本題に入っていきましょう。


エンジンオイルが排気管へと紛れ込むそのメカニズムは以下のとおりです。


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前提:エンジンケース内の空気(ブローバイガス)は、再循環システムによって吸気管へと合流されている。


1.エンジンケース内は高温環境

2.オイルが微量に蒸発していて、ミスト状に漂っている

3.そのミスト状のオイルがPCVシステムを介して吸気ポートへ循環される

4.燃焼室で一緒に燃える

5.排気管(DPF)へ


オイルが直接燃焼室へ向かわないよう途中にバッフルプレートが装着されたりしていますが、それでも気体に漂う細かいオイルミストまでは完全に除去できませんので、どうしても燃焼室にオイル分が紛れ込んでしまいます。


実際、排気ガスに含まれる(DPFで処理される)汚染物質の内訳は...


画像引用:シェルルブリカンツジャパン

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このように、オイルが原因となる要因が半分以上を占めています。

燃料の不完全燃焼成分だけでなく、オイルの不完全燃焼成分(カーボン)が非常に多いのです。


なので、いかにオイルを燃焼室へ持ち込まないかが大事になります。



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【蒸発量(Noack)に目を向ける】


規格上でいくら灰分が規制されていても、原因物質(オイル由来)がガンガン送り込まれたのではDPFの処理が追いつきません。


特にJASO規格のオイルには鉱物油が多い(!)ので、蒸発量が多くてなおさらです。


実際、蒸発量の規制値について比較しても、JASOとACEAでは乖離があります。


JASO

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ACEA

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(ちなみにACEAでは大型車用E規格でも全てのグレードで13%以下です)


つまりは、ディーゼル用のオイルを語る上で「灰分」だけでは片手落ちで、「蒸発量」についても強く検討しなければなりません。



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【他には?】


また、オイルに含まれる粘度指数向上剤(俗に言うポリマー)は熱の影響で劣化するとスラッジ&カーボン化してしまうためこれもDPFを詰まらせます。


粘度グレードの巾が大きいオイルや、無駄に粘度指数の高いオイルは避けるべきでしょうね。



あとは、そもそものブローバイの量を減らすことも大事です。

つまりはピストンリングの密閉性なのですが、一般には固いオイルを入れることで密閉性は上がると言われています。


ですが実際には単に固ければ向上するとも言い切れず、そんな単純な対策ではないようだというのが個人的な知見(知識と経験値)です。



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【ディーゼルエンジンに適したエンジンオイルとは】


以上、ここまで書いてきたことをまとめた、(DPF付)ディーゼルエンジンに適した良オイルの条件とは、、、


  1. 灰分が少ないこと

  2. 蒸発量が少ないこと

  3. 鉱物油でないこと

  4. 粘度指数向上剤ができるだけ含まれていないこと

  5. 密閉性が高いこと


あたりが挙げられそうです。


でも、世のディーゼルオイルで主張しているのって1.の灰分のことばっかりじゃないですか?

そこだけに着目していても良いオイルにはたどり着けません。


2.蒸発量(Noack)

→ できればACEA規格準拠。データが公開されていれば尚良し。

→ 鉱物油は避ける。蒸発量の少ないGTLやPAOベースを選ぶ。


3.鉱物油

→ 避ける。(絶対条件)

→ 鉱物油由来のVHVIよりも、できればGTLやPAOベースを選びたい。


4.粘度指数向上剤

→ 粘度グレードの幅の大きいものはできるだけ避ける。

粘度指数の高すぎるオイルも避ける。(VI=140~160前後が落とし所かな?)


5.密閉性

→ 安定性(粘度指数)の高いベースオイル(GTLやPAO)を選ぶ。

→ 密閉性を上げる効果のある添加剤の配合



以上を集約して要約すると、


ディーゼルオイルの性能の大半はベースオイルで決まる。

というのが見えてきそうです。


ACEA C3オイルでも大半がVHVI(グループIII)ベースですが、GTLベースに変えると再生頻度がかなり伸びると思いますよ。


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VeriorでもDPFに考慮した(GTLベースの)ディーゼルオイルを開発しましたので、これを読んで気になった方は試しにどうぞ。

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