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車のトランスミッションにエンジンオイルを使ってもいいの?

  • 執筆者の写真: Verior
    Verior
  • 3月19日
  • 読了時間: 3分

先日の日記で、ミッションオイルを試作してバスに入れた話を書きましたが、その中身は簡単に言えばVerior -CastorにWS2を少し増したような物。(日記に書いた通り、もちろん中身は考えてありますが。)


結果としては(車両重量4,800kgのバスでも)一切問題なく機能しているのですが、そうは言っても大体の人は、

「ミッションにエンジンオイル入れたのかよ。」

って思うと思う。


で、タイトルの回収。

「車のトランスミッションにエンジンオイルを使ってもいいの?」


これを一般論ベースで説明してみます。



入れても機能はしますが、フィーリングは悪いでしょうし、ギアの摩耗を早めてしまう恐れが強いです。


それは以下2つの理由です。



● 極圧剤の有無

ギアオイルを自分で抜いたことがある人なら分かる、あの鼻につく強烈な臭い。


あれは極圧剤に含まれる硫黄分の臭いです。


エンジンオイルではそんな臭いがしない事でわかるように、ギアオイルにはそれだけ硫黄がたっぷりと含まれています。


硫黄は極圧性能を担う添加物質。歯車の接触部など、強烈な圧力が加わる部分で硫化鉄へと変化し、膜を形成することで金属を摩耗から防ぎます。


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※ 余談ですが、ギアオイルにはグレードにGL-4とGL-5がありますが、EP剤(硫黄の含有量)の違いです。


トランスミッションにはGL-4、ディファレンシャルにはGL-5が指定されていて、GL-5の方が硫黄分多めです。


もしトランスミッションにGL-5を使うと、その強い硫黄分でシンクロギアの腐食と摩耗を早めてしまいます。(シンクロギアは鉄製ではない)


「数字が大きいほうが最新版で高品質」という意味ではないので、勘違いしないようにしましょう。


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● 潤滑性の違い

エンジンオイルはとにかくスムーズであるに越したことはありませんがギアオイルは別です。


トランスミッションはシンクロギアで回転を調節して変速切り替えをスムーズに行いますが、もし潤滑性が高すぎるオイルをミッションに入れた場合、シフトチェンジの際にシンクロギアが滑り過ぎて中々ギアが入らない可能性があります。


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↑シンクロギアは黄銅等、鉄よりも柔らかい金属でできていて腐食に弱いので、硫黄や塩素系の添加剤には気をつけなければならない



難しい話ですが、トランスミッションオイルは滑りすぎても良くないし、滑らなくてももちろん困るしで、適切な摩擦具合があるのです。




第2幕「昔のMINIは?」


ちょっと車に詳しい中年~初老の年齢層であれば当然こういう疑問も出てきますよね?


なんでMINIに限ってエンジンオイルで良しとしているのか?

昔のほうが今よりもオイルの質が低いでしょうに。

ギアオイルをブレンドとかしないの?


私も当然疑問に思ってちょっと調べてみました。


Castrol Classic Engine Oils


MINIのオイルと言えばカストロールのXL。

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MSDSを見ても特に特殊な記述は見当たらなかったけど、PDSを見たら「触媒の付いた車には使わないで」って書いてあった。

触媒車に使っちゃいけないと言うくらいにりんや硫黄(いずれも極圧性能を高めるが触媒への攻撃性あり)が多目なのかもしれないね。


ちなみに、XLではなくGTXだとはっきりと「ZDDP使って保護してますよ」って書いてあるけど、どちらにしてもMINI専用のオイルとは謳ってない。


結論としては、MINIの場合はリンや硫黄が多目なオイルを使うことと、そもそも固い粘度を使うことでオイルそのものの油性でカバーしているようですね。

3件のコメント


ゲスト
4月30日

トランスミッションとデフが一体のFF車では、どう選択すればいいのでしょうか?

デフも純正のオープンデフなのか、社外品のLSDなどの場合で変わると思うのですが。

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Verior
Verior
4月30日
返信先

まずはじめに、冒頭に書いてある通りこれはあくまで一般論で書いてある文章ですので、すべてのケースに通用する話ではないということはご理解ください。

基本は純正指定のグレードを使うことが大前提です。


その上で個別のケース、例えばLSDを組んだりした場合は求める性能の優先順位も変わるでしょうから、LSD専用のギアオイルを選択するほうが望ましいと思われます。


しかし、エンジンオイルと同様、ギアオイルもメーカーや商品によって性能は千差万別。

また一言で極圧性能といってもそれを担う成分は硫黄や塩素だけとは限りませんし、硫黄分の多寡だけで性能は図れません。

むしろ構成の大半を占めるベースオイルの性状も影響としては大きいでしょう。

そして実際にミッション・デフ兼用オイルも多く存在しています。


兼用オイルの話(大型車)はシェルのサイトにも載ってありますのでこちらもご参考ください。

ギヤ鳴き改善のための潤滑技術 | 潤滑油グリースコンテンツ


結局のところはエンジンオイルと一緒で「SP規格だから高性能」とはならないのと同様に、「GL-○規格だから」という単純化した話では選べないということです。

トライ&エラーで良いオイルを見つけていくしかないですね。

編集済み
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ゲスト
3月19日

GL-4とGL-5の使い分け、勉強になりました。

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