top of page

ブログ更新のお知らせを受け取る

お申し込みありがとうございました。

潤滑領域から見る低粘度オイルの不合理性

  • 執筆者の写真: Verior
    Verior
  • 11 時間前
  • 読了時間: 9分

タイトル固いよ…


今日の話は長いですが、実用的で為になるはずですのでぜひ勉強していってください。


*


Veriorでは途中まで0W-20の粘度は作らない方針で続けていました。

その後、コンセプトの一つの高耐久性に目をつぶりラインナップ入りをしたのがVerior業ですが、リッター1,300円でGTLベース&アルキルナフタレン&有機タングステン入りというのは圧倒的すぎるコスパだと自負しております。

(GTLベースオイルやアルキルナフタレンは加水分解に強いので、低油温走行でも性能維持に有利)


しかしエンジンオイルとエンジン保護の本質として、低粘度という物理性は基本的に不利であることを認識する必要があります。


今日はそんな「低粘度オイルが不利な理由(とその中でも良いオイルの見つけ方)」について語ろうと思います。


- - - - - - - - - - - - -

目次




┃ 1.各潤滑領域の説明


まずは本題に入る前に最も基礎的な知識として、潤滑の状態を覚えなければなりません。

とは言え大きく分けて2つ知っておけば十分です。



・一つは、液体の中を滑る「流体潤滑」

・一つは、物体同士が擦れあう「境界潤滑」


(なお、この二つが両方発生する領域は「混合潤滑」と言います)


ストライベック曲線
ストライベック曲線

※実際には潤滑領域の種類は油膜の厚さに応じて5つに分類されています。



エンジンに絞って考えた場合、各潤滑領域はそれぞれ以下のような場所で考慮されます。


《流体潤滑が支配的な部位》

コンロッドメタル,クランクメタル,カムメタル,ピストンスカート部,ピストンリング(オイルリング)等


《境界潤滑が支配的な部位》

カムスプロケット,タイミングチェーン,ピストンリング(トップリング,セカンドリング),ピストンスカート部(上下死点付近),カムとリフターの接触部,コールドスタート(エンジン始動)時の全箇所




┃ 2.各潤滑領域でオイルに求められる役割


《流体潤滑領域》

この領域ではオイルの上に物体が乗っかって滑っている状態。

ここではオイルがクッションのように働くので、なによりも「固さ」がものを言います。

また、荷重がかかって油膜が潰されたときに、簡単に切れないような「粘り強さ」も重要なポイントです。


ここは主にベースオイルが担当する領域です。



《境界潤滑領域》

この領域では物体同士がこすれている状態。

金属同士が擦れると当然削れてしまうので、それを防ぐために擦れあう金属同士の表面に分子レベルでの「膜」を作ってあげる必要があります。


ここは主に添加剤が担当する領域です。




┃ 3.低粘度オイルだと根本的に何が不利なのか


さてようやく本題に入ってきました。(前知識が長い)

まず前提として『低粘度オイル=0W-20以下』としています。


低粘度なオイルは柔らかい。つまり油膜が「つぶれやすい」と言えます。

一例としてクランクメタル(回転軸受け部)は、オイルが常に供給されていて基本的にはオイルの上に浮いた状態で回転しています。


しかしエンジンの爆発(膨張)エネルギーを受け止める際、下死点に向かってコンロッドに引っ張られる形で軸受け部に圧力がかかります。

この時、オイルがあまり柔らかいと、押しつぶされる形で部分的に油膜が切れる可能性が高まります。


つまり、「オイルが柔らかいほど流体潤滑の効果が弱まる」傾向になります。


油膜の厚さ順に、流体潤滑がだめなら次は混合潤滑→その次は境界潤滑と、フェーズが移行していきます。


前段で書いたように、境界潤滑領域は添加剤の守備範囲。


ZnDTPやMoDTCの出番となるわけですが、これら添加剤はベースオイルと違って消耗品。

膜を作っては剥がれ、を繰り返し、成分が徐々に失われていくため、オイルの性能寿命は縮まっていきます。


エンジンオイルの成分の70%~80%はベースオイルですので、たっぷりあるベースオイルの油膜(流体潤滑領域)で働いてもらって、添加剤はできるだけ消耗しない方が長持ちするのは当然です。


これはクランクメタルだけでなくピストンスカート部など混合潤滑領域も同様。


本来は流体潤滑でまかなえる場所なのに、そこに境界潤滑を発生させてしまうってのは、


そりゃ悪手だろ 蟻んコ



なおクランク軸で境界潤滑が進んで添加剤効果も使い切ると、当然メタルが擦り減ってきます。

すると軸のガタが大きくなり、クランクシールに隙間をもたらし、最終的にはケースからのオイル漏れを発生させます。




┃ 4.さらに追い打ちをかける低粘度オイル故の不利性


今どきは低粘度オイルが主流なのに、ホントにそんなに悪いんか?

低粘度オイルの作り方は各社様々だと思いますが、よく市販されている「化学合成油」と銘打っている0W-20は大概グループIIIという鉱物油(VHVI)がベースです。

グループIIIベースオイルの資料として有名なYUBASEを見つけましたのでこれを参考にしましょう。



出典:スタンダード石油 グループIII



次にSAEの粘度表



YUBASEの中ではじめから20番相当の100℃動粘度を持つものはありますが、0Wの流動点(-40℃)に届きません。

一方で流動点の低いものをブレンドした場合、今度は100℃動粘度が届きません。


なので、それぞれを補完するために

・流動点降下剤

・粘度指数向上剤

を使うことになります。

(使われる材料はどちらも広義のPMAですが中身は違う)



さて粘度指数向上剤には様々ありますが、耐久性も様々。


・OCP(オレフィンコポリマー)は増粘しやすいけど剪断安定性は弱い。(分子が長いから)

・PMA(ポリメタクリレート)は中間。

・スターポリマーは増粘しにくいけどせん断安定性は最強。(分子が短いから)


基本、高級オイル以外にはOCPかPMAが使われます。


粘度指数向上剤は”以前のブログ(粘度指数の捉え方)”を読んでいただければと思いますが、せん断された後はゴミになるし、熱で酸化して煤になるしで、オイルの寿命を考えた場合はあまり多く入れるべきではない代物です。



粘度指数向上剤が劣化して損失していくとオイルの粘度は元の柔らかい状態へ戻っていきます。

てことは元々柔らかいオイルがさらに柔らかくなっていきますので、流体潤滑が成立しなくなる可能性がさらに高まっていきます。


…なんともならんクソゲーやないかい





┃ 5.低粘度でも良い(強い)オイルは無いものか…


こんなにデメリットばかり言われると不安になってきませんか。


「そうは言ってももう10年以上前からメーカーは低粘度で純正指定しているし、こんなどこの馬の骨とも知れない輩が垂れ流してる妄言よりも、メーカーの方がよっぽど信用に足るわい。」


その通りです!メーカーを信じましょう!

信じるって何を?

メーカーアプルーバル(認証)制度をです。


ヨーロッパの自動車メーカーは、共通規格であるACEAとは別に、自社の耐久テストを課した独自の認証規格制度を設けています。


各社メーカーアプルーバル(認証)とACEA規格の位置付け
各社メーカーアプルーバル(認証)とACEA規格の位置付け


基本的に3万kmの持久性をテストした上で一定以上の性能を担保しているので、これの認証というお墨付きを得たオイルは間違いないとみていいでしょう。(特にVWの認証は厳格だそうですね。)


ただし!


ここで気を付けるのが『認証』『適合』という文言の使い分けです。

オイルのパッケージやホームページ上の説明には、上の二つが使い分けてあるはずです。


『認証』は、そのメーカーに依頼して試験をした結果合格した商品。

『適合』は、その認証規格の合格を目指して作成した商品。メーカーの試験は受けていません。


外国製品でしたら『認証=Approved』、『適合=Meets』といった感じの表現になっていると思いますのでよーくチェックしてください。


もちろん、一概に『適合』だから性能が満たないとは言えません。(認証コストめっちゃかかるからね)

が、『認証』との間には信用性の意味で越えがたい深い溝があるということだけは覚えておいてください。


ちなみに、このような非常に厳しいメーカー認証をパスするには、先ほど説明した流体潤滑領域での油膜保持性が強く求められます。

しかも3万kmを耐久するだけの。


ここではHTHS(高温高せん断強度)が大事な要素になってきます。

単に粘度指数向上剤で新油の数値上だけクリアしたようなヘボいオイルでは絶対に認証は通りません。




┃ 6.HTHS(高温高せん断強度)の罠


HTHSは特にヨーロッパメーカーが重要視する項目で、日本でも一部メーカーはこれを表示して優位性をアピールしています。


しかしこのHTHSという数値、試験自体は数秒で評価します。


HTHS試験機
HTHS試験機

あくまで試験開始後すぐに測定された初期性能値であって、オイルの劣化やせん断分解による粘度低下はこの試験では評価されません。


つまり一瞬の数値だけとれればいいので、簡単に言ってしまえば粘度指数向上剤で上げる(ごまかす)ことができちゃいそうです。


「HTHSが高いこのオイルはエンジン保護性能が高いです!」


っては言うけど、「それってどれくらい続くの?」は答えない。

だって中身教えてくれんもん。


なので大事なのは結局、耐久テストを行うメーカーアプルーバル認証だという話に戻ってしまうのです。




┃ 7.Veriorオイルがとる油膜性能へのアプローチ


最後に当社(てか私の)オイルの油膜性能へのアプローチについて説明して終わりにしますね。


Verior5(5W-40)やVerior10のベースに使っているエンジンオイル(製品)。

某社のトップグレード商品ですが、

ACEA A3/B4なのは最低限として、


認証(Approved)が

・MercedesBenz 229.5,229.3

・VW 502.00 / 505.00

をとってあります。


また適合(Meets)もしくはそれ以上(Exceeds)が、

・BMW LL-01

・RN 0700/0710

・Ford WSS-M2C937A

となっております。



『適合』にVWとメルセデスベンツが入っていることから十分な性能があることが保証されています。



その他独自の方策として、


《アルキルナフタレン》


0W-20に限らずですが、油膜強度を得るために『アルキルナフタレン』を添加しています。

アルキルナフタレンの分子構造を見ると視覚的にも明確ですが、六角形(ベンゼン環)が結合した、とっても安定性のある構造をしているのが分かります。



こいつは本当にせん断に強く、まず破壊されないため、油膜が潰されやすい低粘度なオイルほど効いてきます。

…ほんと万能選手だなアルキルナフタレンは。


なお実際お客さんのレビューにもありますが、

0W-20を使っていて不満があったけど、アルキルナフタレンを添加したら全域で---特に高回転域---の振動が無くなって明らかに滑らかになった。

との感想をいただいていますので、今回説明した理屈とも合致していますね。


高回転域では負荷が増すため、これまでのオイルだけでは流体潤滑が維持できていなかった証拠です。




《有機タングステン》


仮に油膜が一時的に切れて境界潤滑が発生した場合は、次はタングステンが働く出番です。


タングステンはモリブデンよりも硬度が高いために反応膜の強度がより強固です。

またモリブデンよりも耐熱性が高く、高温による酸化・分解が進まないため、長期にわたって金属面の保護膜を維持し続けてくれます。


有機タングステンの仕入れ価格は、(ただでさえ高い)アルキルナフタレンの約2倍です。やばし。


これをリッター1,300円の廉価グレードであるVerior業にもしっかり配合しているという壊れっぷりです。



- - - - - - - - - -


Veriorのオイルはどれも高性能な物を使ってしっかり作りこんでるんですって。見くびらないでいただきたい。

コメント


bottom of page